CLI と自分の LLM で記帳する
これはファイルファーストな記帳の進め方です。自分の AI アシスタント
(Claude、Cursor、Copilot、その他 MCP 対応エージェント)が Markdown / YAML
ファイルを読み書きし、iris CLI がその結果をチェックして帳簿に関する問いに
答えます。ここに書くことはすべてオフラインで動きます。
全体イメージ
台帳をフォームに入力するのではありません。代わりに:
- あなたが元資料を
raw/に置く。 - AI がそれを読み、仕訳をファイルとして提案する。
irisが構造と計算を検証し、レポートを計算する。- あなたがレビューし承認する(仕訳を
postedに昇格)。
退屈な入力は AI が、決定論的な審判は iris が担い、何を記帳するかはあなたが
握ります。
最初の一度: AI をつなぐ
iris onboard
iris onboard は iris mcp serve(iris の各動詞をツールとして公開する小さな
サーバー)を MCP 対応アシスタントに登録し、Claude Code スキルを書き込みます。
Claude Code には常に登録され、Claude Desktop・Codex・Cursor・Gemini CLI・
VS Code はインストールが検出された場合に登録されます。これにより、アシスタント
は台帳の状態を推測せず、validate・diff・balance・report・status、そして
サインイン後は sync を直接呼べます。
現在の接続状態は iris onboard --status でいつでも確認できます(AI 向けには
--json を追加)。iris onboard の再実行は常に安全で、登録はその場で更新され
ます。すべて元に戻すには iris offboard — 帳簿やサインインには触れずに、登録
とスキルを削除します。
この接続設定は、帳簿フォルダがあるマシンのためのものです。クラウド連携済みの 帳簿なら、そのマシンから離れた場所からも帳簿と対話できます — 外出先の AI から帳簿へ(リモートコネクタ) を参照してください。
どの帳簿にもルートに LLM-GUIDE.md が同梱されます。AI が作業前に読む完全な作業
契約書です。あなたが読む必要はありませんが、AI が規約(ファイル名、複式簿記の
ルール、不確実な点をどこに記すか)を知っているのはこのおかげです。
サンドボックス内のアシスタント(
irisバイナリの無い VM など): 帳簿内に 同梱コピーはありません。モデルは「ホスト上の唯一のirisを MCP 経由で使う」 です。ホストがiris mcp serveを実行し、アシスタントは同じフォルダに対して 各動詞を MCP ツールとして呼び出します。
毎日のループ
1. 資料を raw/ に置く
銀行CSV、領収書スキャン、PDF 請求書を raw/ のどこかに置きます。日付別・取引先別の
サブフォルダも自由です。AI はファイルの場所ではなく中身から種類を判別します。
2. AI に処理させる
アシスタントに「raw の新しい銀行明細を処理して」のように頼みます。LLM-GUIDE.md
に従い、AI は次を行います。
- ファイルを全文読み、
notes/raw/<source>.mdにパースキャッシュを書きます。 各行をjournaled・ignored・deferredで記録した恒久的な表です。あとで同じ 明細を開き直しても作業をやり直さずに済みます。 - 実取引ごとに
journals/<fy>/<mm>/…-NN.mdを1件、status: draftで提案します。 - 曖昧なものは推測せず
notes/open-questions.mdに記録します。
3. 検証する
iris validate
全ファイルをチェックします。YAML が解析でき、借方=貸方、科目が勘定科目表に存在し、 日付が整合し、ステータスが正当で、(日本の課税事業者向けには)税区分が整合して いるか。エラー — たいていは勘定科目表に無い科目か、貸借不一致 — を直して再実行 します。このループは AI に任せられます。
iris validate の末尾に「同期キューでブロックされたファイルがある」旨の注記が
出た場合、それはファイルの問題ではなくサーバー側の拒否です。
トラブルシューティング を参照。
4. レビューして帳簿を読む
iris balance # 本日時点の試算表(posted のみ)
iris report pl --from 2026-04-01 --to 2026-06-30
iris report bs --as-of 2026-06-30
iris search --payee amazon --from 2026-04-01 # 仕訳を検索
iris show raw/2026-05-invoice.pdf # この資料を引用する仕訳
iris search と iris show は、ファイルに対する決定論的・オフラインのビューです。
フォルダを目視する代わりに、これらを使い(AI にも使わせ)ましょう。
5. posted へ昇格する
draft の仕訳(下書き)は、記帳するまでレポートや残高に載りません。納得
できたら昇格します。
iris post journals/2026/05/2026-05-04-example-com-01.md
iris post はファイルを検証(空でない・貸借一致)し、status: posted にし、
帳簿がクラウド連携済みなら同期します。--dry-run で変更せず確認できます。
status: フィールドを手で編集してもかまいません。post は貸借チェックと同期を
兼ねた便利コマンドです。
オンラインにする(クラウド)
ローカル帳簿をクラウドにリンクすると、Web アプリ・複数端末・共同作業・期間
年度の締め・恒久履歴が使えるようになります。上記のファイルファーストな
流れは変わらず、iris sync が増えるだけです。
iris api login # ブラウザでサインイン。このデバイス専用の CLI セッションが発行される
iris api books new # クラウド帳簿を作成…
# …または既存のものにこのフォルダをリンク:
iris api books link <book-id>
iris sync # 明示的な push + pull を1回
以後:
iris syncはローカルの変更を push し、新規分(例:税理士が Web アプリで追加した 仕訳)を pull します。ファイルごとに受理/拒否を報告します。iris diffは同期前に「何が push されるか」を正確に表示します。iris api history --path journals/2026/05/...md <book-id>はファイルの 訂正・削除の履歴を表示します。
同期は明示的なまま — 依頼したときだけ動き、裏では動きません。
固定資産と減価償却
償却資産がある場合は、各資産を assets/YYYY/<name>.md に記述します(取得価額・
耐用年数・方法)。続いて:
iris asset schedule # 各資産の償却計画を見る
iris asset depreciate --month 2026-05 # その月の償却仕訳を生成
iris asset depreciate は提案仕訳(status: draft)を書き出すので、ほかの仕訳と
同様にレビューして posted にします。詳細と日本固有のルールは
日本の税務・コンプライアンス に。
エクスポート
iris export # journals.csv, trial-balance.csv, ledger-*.csv
iris export --year 2026 # 会計年度で絞り込み
iris export assets # 資産別の償却スケジュール
CSV は Excel が日本語を正しく開けるよう UTF-8(BOM 付き)で書き出します。
クラウド連携済みの帳簿では iris api export audit <book-id> が監査人向けの
一式を作ります。
やってはいけないこと
次のルールが帳簿の信頼性を保ちます(AI もこれに従います)。
posted仕訳を一括編集しない — 訂正仕訳を起こす。compiled/を手で編集しない — 再生成可能な出力。- 仕訳の中で科目を勝手に作らない — 先に勘定科目表へ追加する。
次へ: GUI 側は Web アプリを使う、全コマンドは CLI コマンドリファレンス。